若いころは、この年まで生きれば、迷いも憂いも執着もなく、達観し自信に満ちた晴れ晴れとした清々しい自分の存在が待っていると、愚かにも期待しつつ生きてきましたが、いざ還暦を迎えると、迷いと憂いと執着とコンプレックスと物忘れと腎臓結石と神経痛をチャンプルしたものが60歳であることを悟りました。ただ言えることは、この2年で同い年の親友が癌で3人も亡くなったことから、とにかく生きていられるだけで感謝です。
ふと、この機会に、どこかバイクでフラッと行ってみたいところがないか自問したところ、大学の教養学部のキャンパスでした。医学部ではなく教養学部。医学部だと今の自分とかぶる箇所が大きいので、ノスタルジーを感じません。現実と接点のない、ただ純粋に学生生活を過ごし、楽しんだ教養学部時代の日々に、いざセンチメンタルジャーニー。40年も経っているので、まるで変っているだろうと行ったのですが、意外にもほとんどキャンパスは変わらず、構内も学食も、ほぼそのまま。学食の値段こそ変わっているもののメニューも同じ。当時よく食べていたカツカレー大盛を見ると、洗面器のような皿に3合のめしが盛られ、その上にスニーカーサイズのトンカツが陣取り、こんなものを自分が食していたのかと、ほとほと呆れました。今じゃ、5分の1も食べれない。1時間ほど、不審者と間違われぬようキャンパスを散策したのち、あ~、もう一度、性根を入れ替えて、まじめに大学で勉強したいなぁ、と無駄にボヤきながら、再びバイクにまたがり、矢沢永吉の「もう一人の俺」を口ずさみつつ帰路につく60のオヤジでした。
♪夜更けにひとりで思い出すいまも、何の不安もなかったあの頃、大事なものさえ置き去りにしてきた自分を俺は恨まないけれど、もいちど、光の道を駆け抜け、お前に会いたい~♪
40年前の俺に会ってきたぜ、永ちゃん!